クルッシャイ ムリーぐル!〜すべてうまくいっています。

チュニジアのキリム に魅せられ、「ただの主婦」からライフシフトしてなぜこんなところでそんなこと?的 目が点腰抜け半移住チュニジア生活のお話。

ぼりーすに逮捕されちゃう話。

 

【実は最近知ったのだが、泊めている外国人が何か被害にあったりケガ、病気になったりすると、その家の代表者が逮捕される、という驚きの仕組みになっているので、家族たちは何事もないよう、かなり気を遣っていたのである】

 

前回、また改めて、と書いた、上記の件。

 

ちょっと何言ってるかわからない、と思われるであろうが、私自身もトゥジェンでのホームステイを始めてから5年も経った最近になって知った、まさかそこまで?の事実である。

 

トゥジェンはチュニジアの首都チュニスから南へ約500km, ガベス県に位置する。

そんな地方都市のみの制度らしいのだが、まず基本的な規則が。

外国人がトゥジェンを訪れる際、その日のうちにそこを出るのではなく宿泊するとなると、最寄りの警察に届け出が必要でなのである。

 

・パスポートを提示、ナンバーなどを控えられる。

・いつからいつまで、どこの家に泊まるか、職業などの質問あり。

・宿泊させる家の世帯主または代表者(届け出た本人)も身分証確認、連絡先を登録。

 

初めてホームステイするとなった時、チュニスから延々と7時間ほどバスで揺られてメドニンへ、そこでファミリーの次男、修行僧然としたノルディン、車出した親戚、チュニスで働く末息子の帰省中の友人ほか、迎えに来てくれ、さらに車でトゥジェンへ25分ほど。なーーーーーんにもない真っ平らな荒っぽい平原が続くのだが、モスクや店が並んだちょっとにぎやかなところで車がとまり、身振り手振りで一緒に来て、と言われてついて行った先がその地の警察署であった。

(写真取るわけにも行かないが、チュニジアのタイルを多用して可愛い部分もありながらも、

全く警察感なし、ただの石造りのなんもない小さなレセプションだった)

 

その時、私の周りにいたのは警察官含めて英語を話さない方達で、パスポート出せ、くらいはなんとかわかったのだが、名前や番号書き取りながら何か尋ねて来られても全くわからず、全員困り果てて、とうとう英語がわかるチュニスの末息子に電話して通訳してもらうはめに。初回だけのことはあり、基本的な質問でも喧々諤々の大騒動となった。

この時以来、私のトゥジェンでの『身元引き受け人』はノルディンである。

 

帰る時にまた警察へ寄って、帰りますと報告することはなかったので、あとで慌てて尋ねてみたら、その際は警察へ電話して、あの外国人は帰った、と言えばOK、とのこと。

え、そんな、電話で言うだけ?と思いつつも、郷に行っては郷に従え、である。

 

その後も、トゥジェンに行けば必ず警察に立ち寄り、滞在の届け出をする。

もうお互い慣れたもの、今や簡単な受け答えはチュニジア語で自分で言える。

 

届け出の後の、滞在中は本当に泊まっているのか、まだいるんだな?的な安否確認の電話が警察から入る、と言う話だった。それも電話だけ?実際に見にくるのならまだしも、電話で聞いても事実かどうか確かめられないよね・・・・と思いつつ。

 

ホームスティも回を重ね、2020年の秋からトゥジェンに近いガベスに拠点を置き、ほぼ毎週通って連続した3〜4泊を過ごすようになった時は、到着時にいちいち届け出ずとも電話で今来た、今ガベスに戻った、と代表者ノルディンが連絡すれば良いようになっていた。

もはや 『いつもの』というところへ到達。

 

 

はじめのうちは、お互い異星人と付き合うような緊張感を持った日々、その地の慣習で女性が一人で外を歩くのはタブー、カフェに行くなんてとんでもない!等々、行動範囲が恐ろしく狭かったのだが、だんだん変化が見られ、こちらも少しづつ少しづつ、信用を得ながら打破してきた部分もあり、だいぶ行動範囲が広がってきた。

家にとどまっていては『仕事』にならないので、タイミングを見計らい、策を練り、E.Tは出かけたらいいこと(お土産)もたらします、と言う条件づけを重ね、嫉妬に燃えるアジザが泣いても拗ねても、ママに嫌な顔されても心を鬼にして他のキリム織る女性宅へ出かけ、『実績』を積んできたのである。

 

もちろん、この国の文化慣習には敬意を払い出来るだけ尊重する。否定はしない。とにかく、受け入れてもらえていることには感謝しかないのだから、もうお断りです、と言われないよう、決してファミリーに迷惑かけないのは当たり前で、少しでも益をもたらすように、従える部分は郷に従い、そキリムを通してこの地にお金が落ちるようにも計らう。家族の一員として認められるようにも頑張ってきたつもりだ。

 

だが、しかし。この地の事情はこちらのそんな思惑をはるかに上回るものであった。

 

私に対してかけられる行動制限は、基本、女性は在宅で、買い物も男性のすること、人目に触れてはいけないという慣習や、人付き合いに関する独特の思考や文化(これも後述)を、トゥジェンの人たちと同じように当てはめられたが故のもの、と思っていた。

家族男性の同伴必須、それもころころ変わる彼らの都合、さらにその男性に手配を依頼せねばならぬ、車出せる親戚の都合頼みでは、とにもかくにもまったくのかごの鳥で話にならないので、さまざまな必要が生じてきた2020年1月の末のある日、半ば強行突破気味に、単独で最寄りの『都会』メドニンへ行くことに。最初は大反対のアジザもママも苦虫をかみつぶしたような顔でしぶしぶ認めた。出発は朝7時、午後1時の帰宅である。バスが1日に一往復しかないのだ。

 

お土産にメドニンで買ってきた魚(トゥジェンでは売ってない)を料理しながら、いつも陽気なアジザが いつになく真面目な顔で唐突に言ったのが 冒頭の、前回書いたあの一文。

 

泊めている外国人が何か被害にあったりケガ、病気になったりすると、その家の代表者が逮捕される。

 

である。だからメドニン行きに反対したのだ、無事でよかったわと。

 

ときどき、そんなことすると警察:ぼりーす(地方の訛りで濁る、ぽ:po ではなくぼ:bo)

がこうする、と手錠をかけられるジェスチャーをして笑ったりはしていた。

納品期日に遅れたら発注受けたエリ:私が日本で逮捕されるんだから急げ!とあり得ない発破を弟にかけられて、アジザはエリが逮捕されては大変! と数日間、朝から晩まで死に物狂いで私が頼んだキリムを織ったことがある。それ以来何かと 私がクスクスこぼしても 逮捕されるジェスチャーして笑ったりしていたのだが。

 

泊めている外国人が何か悪いことをしたら連隊責任、監督不行き届きで連座制で逮捕、それならわかるのだが、携帯ひったくられるとか、何か盗まれる、などの被害にあっても、さらには病気発症、ケガ、交通事故、まったく防ぎようもない不可抗力の出来事であっても、とにかくなんらかその外国人の心身に良くないことがあったら、泊めますと届け出た世帯主が逮捕される、というのだ。

だから、今日 エリがメドニンに一人で行ったのを知った「責任者」の次男ノルディンが、なぜ許して行かせた?と猛烈に怒ったのだ、と言うではないか。 

 

ちょっと何言ってるかわからない。にわかには信じがたく、しばらく呆然。

そんなバカな、何それ、ありえない、おかしいでしょ、と言うなんとも落としどころのない気持ち悪さと、もしそれが本当で、万が一 何かあったとしたらどれほど迷惑かけることになるのか・・・たとえ風邪引いて、熱出して寝込んだりしても?

いやいやいや、そんなこと、警察に明かさなきゃわからないでしょ、交通事故ならまだしも・・・etc etc  理解できないことに対する考えがぐるんぐるん 頭の中を回り続けた。

 

聞くところによると、実際本当にそうらしい。法律的には県によって違いがあるようで、首都チュニスではまったく考えられないことのようだが、ガベス県では本当にそんなことが定められていると言うのだ。責任負わせない、家族の逮捕を避けるためには、個人宅ではなく、プロ、民宿等、宿泊施設に常に泊まるしかないらしい。責任は私自身が負います、と言う念書書いても効力ない、とも・・・ホームステイには大きなリスクが伴うのだ。

 

頭抱えた。今までで一番ショックだった。トゥジェンで、これまでに腰が抜けることはいっぱいあったけど、それとはまた別次元で腰が砕けた。あれダメ、これダメ、メドニンに行くなんて!!!にはそう言う理由もあったのか・・・。私は一歩間違えばとんでもない大迷惑を家族にかけることになる、と思うと身の置き所がないように感じ、気持ちを切り替えるのには少し時間を要した。

 

あらゆる点で日本と大きく違うチュニジア、法制度、国家権力、強権発動、警察という名の放つ圧力威圧感は半端ない。この純朴など田舎では、普段は警察の出番なぞ皆無、逮捕なんて震え上がるレベル。

 

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2020年3月、Covid-19感染症抑止のため夜間外出禁止令を正則アラビア語で発する、憲法学者でもあるチュニジア大統領。翌日からチュニスの街はそこら中警官だらけに。

 

 

今日は無事でよかった、ちょっとやり過ぎたか、と申し訳なかったけれど、当の責任者、ノルディンが私にこの件で何か言ってくることはなかった。いつも通りの淡々、むっつりである。

いやー、、参ったな、これからどうしよう、おとなしくもしていられないけど、ノルディンが逮捕されるのは避けたいし・・・

考え込む私に、明るさを取り戻したアジザがにっこり笑って言い放つ。

 

『ノルディン、ボリース、ミセールシ!!! エリ ディーマ フィ トゥジェン、トゥジェニーヤ ベーヒ!!!』

 

→ノルディンは警察つかまっても平気平気!大丈夫、それより、もう来ないなんて言わないで、もうずっとここに住めば、トゥジェン人になればいいのよ!!!!(意訳)

 

そ、そうね・・・ちょっと考えさせて。

 

旅はまだまだ続く。

 

* 警察への届け出は、拠点とした県内のガベスでも、遊びに行っただけのマトマタでも同様に行っている。

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メドニンといえばクサール:倉庫群が有名。

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早朝のメドニン。行動の拠点を据えるための撮影。

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いろんな意味で、外出もそう簡単には行かない。

この先が今のトゥジェンの中心部になるが、近くて遠い。

 

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