オリーブ食堂
前回書いた、facefood近辺の写真を見ていて、ぶわーと蘇ってきた思い出。
早くも涙目。
チュニジア南部、良く言えば力強くたくましく、悪く言えば大変に粗っぽい街、ガベス。
その中でも古い地区 ジャーラというところに昨年10月末から5ヶ月間住み、諸事情によりアパート近辺に限られてしまったけれどそれなりに町歩きを楽しんで、『facefood』も発見したりしていたのだけれど・・・
少しづつこのブログに書いていくけれど、チュニジア、特にここガベスでの日々は地方都市で粗っぽいだけに、毎日 ひょええ、とか ぐぇぇぇぇ とか、なんでこの歳になってこんなことを?(好きで来たんだから文句は言えないのだが)ということの連続。でも母国語で思いの丈をぶっ放すこともできず、半端な言語で最低限のコミュニケーションのみ、いつでもどこでもなんでも手に入りなんでもOKの東京とは大違いの暮らし、さまざまなことへの対応であっという間の1日。
これもこの先小出しに書いていくけれど、食生活もガベスの事情、こちらの事情、いろいろ相まって、ガベスでの食生活は
・いわゆるサンドイッチ、ファストフード、私には大きいので、一つテイクアウトして昼と夜とで半分づつ、とか
・パスタ茹でてカツオふりかけとバターとだし醤油と・・・etc あるものかけた、名付けて『ど貧乏パスタ』とインスタント味噌汁
・バナナなどの果物にカップのヨーグルト
・チョコクロワッサンのようなデニッシュ
・バゲットやホブスタブーナなどの最低限のパンにバター&ジャム
と言う具合であった。親が見たら泣く、確実に。
もちろん、『レストラン』もあるけれど、メニューは限定的、そしてチュニスと変わらない値段の割には・・・な経験積んでしまい、営業時間も短くて合わなかったりしてすぐ行かなくなった。
そんなガベスでの哀しき食生活の日々、精神的にいっぱいいっぱいになったり、凹みまくってアパートに戻るのも嫌な時、
『ああああああ、もう今日はなんか落ち着いてちゃんとしたあったかいもの食べようぅぅ!!』
と半べそ涙目でヨロヨロとたどり着く、そんな救いになっていたのが
『マタァム ズィトゥーナ』:オリーブ食堂であった。
漫画のキャラクターか、みたいないかにも気のいい、優しいおじさんが細々やっている街の食堂、と言ったところ。体の大きさと『中身』が微妙にアンバランス、この子この先大丈夫か・・・などと心配になるけど本当にフレンドリーな息子モハンマドが手伝っている。
ガベスにきて、一番最初に仲良くなったニワトリ屋(生きたままのニワトリを売っていて、店頭でさばくのがチュニジアのデフォルト)のお兄ちゃんが紹介してくれた(数軒先だったから)店だった。外の席に座っていたら、そのお兄ちゃんが通りがかりにリンゴをテーブルにぽん、と置いて行ってくれたのだが、モハンマドが『食べるでしょ?洗ってきてあげるよ!』と持って行ったら、ちゃんとカットされてお皿に乗って戻ってきて、大いに感動。
その様子が冒頭の写真である。
その後も、多い時は日に2〜3回前を通っていたこともあり、すぐ仲良くなった。行くたびに、たくさんは食べられない日本人が繰り出すリクエストに応える、野菜多めのスペシャルなメニューを提供してくれた。
小洒落てもいない、ピカピカに綺麗でもない、でも本当に「食堂」感あふれる、温かさがあった。
キッチンから顔を覗かせ、ニコッと笑っておいしいでしょ?とウインクしてくれるムッシュ、べーひ?ベーヒ?:おいしい?おいしい?と何回も聞きに来たり、お気に入りの音楽のPVをスマホで突き出して見せてきたと思ったら、いつの間にか仕事ほったらかしていなくなってるモハンマド。トヨタ、いすゞ、日本の車はすごいけど、ガベスの方がいい街だろう?とか、他のお客さんも混じっての、なんでもない会話が楽しかった。
お腹空いてないのにモハンマドに『寄って行ってよ!』と捕まった時も、席に着くなり深いため息の時も、熱々で具がたっぷりのクスクス、アルデンテなんて吹っ飛ばす、チュニジア風柔らかめパスタ、おふくろの味ならぬムッシュの味はどれも優しく、乾いた心と体に沁みた。
たまらなく寂しく、自分のダメさ、小ささに悲しい気持ちになった時、この食堂の席に座って、ジャガイモやニンジンの皮むきとか、下ごしらえをボランティアでさせてもらおうと行ったこともある。ただただ、日常の毎日の作業に没頭したかった、泣きながらでも。
しかし、思いもよらぬ新型コロナウィルス感染症の影響により、何のけじめもお別れの挨拶もなしに突然の帰国となってしまい、大変な心残りとなってしまった・・・こんなことになるとは思わず、ムッシュとモハンマド、写真撮っていない。激しく後悔。
帰り際、ムッシュもモハンマドも口を揃えての『また明日来るんだよ』が挨拶だった。
その『明日』、オリーブ食堂へ、ムッシュとモハンマドに会えるのはいつの日か、でも絶対にまた行きたい。
ありがとう、ムッシュ、モハンマド、オリーブ食堂。
せめてもの感謝を込めて、まだ旅は続く。
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